白い部屋の片隅で

主に寝て食っています

朝食という聖域

 一般的な人間は朝、昼、夜の三回食事をする。偏食ではない限り、毎日同じものを食べ続けるのは苦痛だから、「昨日は魚だったから今日は鶏肉にしよう」とか「余った肉じゃがをカレーにリメイクしよう」とか、食事を作る人は考えるわけである。少しネットで検索すれば、同じ材料でも多種多様なレシピがすぐ見つかるし、リメイクレシピも山のようにある。

 しかし、この「昨日食べたものを今日食べたくない」という心理は、朝食においてのみ作用しないのではないだろうか。大体朝食は「ごはん派」と「パン派」の2派閥に分かれ、ごはん派は昨日ごはんを食べたからといって翌日パンを食べようとか思わない。かく言う私は完全なパン派で、ほぼ毎日食パンとコーヒーが朝食である。毎日昼ご飯がカレーなのは苦痛だが、毎朝パンであることに何一つ疑問も持たなかった。よく考えたら変な話だ。

 朝はなにかと忙しく、「何を食べよう」と思考する時間がなく、決まりきったルーティンの中で動くことが最も効率的だからかもしれない。私が食べるパンなんて、トーストのみなので調理すらいらない。また、朝起きたばかりだと胃腸の動きが鈍く、その負担にならないメニューが固定化され、次第と同じものを朝食べることで体が目覚めるようになってきたからなのかもしれない。

 だから、旅行に行った時、ホテルの朝食ブッフェであんなに心が躍るのは不思議だ。パンだけではなく、シリアルやお粥、パンケーキなど、普段は口にしないものもどんどん皿に取り口に運ぶ。もちろん、ブッフェ自体が私をわくわくさせているのは間違いないが、朝食の食べ放題は何かが違う。いつも単調な朝食を食べている反動だろうが、「楽しみ尽くしたい」という執着心の強さが凄い。 

 そんなことを考えていたら、ホテルの朝食が猛烈に恋しくなってきた。しかしブッフェというのはそもそも一人で行くのはハードルが高く、中でも朝食なんて朝早いから人を誘いづらい。この障害の多さが非日常さを増しているのだろう。朝食のブッフェ万歳。